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マクウェル・シードと9つの試練 H.618~H.624

えるえる 2016年06月06日(月)21時

これは、とある最強の剣闘士の、伝説のお話。
1000年に一度の戦いの鬼才と、不幸にもそれにちょっかいをかけてしまった哀れな悪魔のお話。
あなたはどこまで、マクウェル・シードについてこられるでしょうか…。

大陸:クラルス大陸 場所 グランディア

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H.618。

ドザァァァァッ!

雄々しい喝采の中、太陽に照らされた灼熱のコロシアムで、血を流しながら、鍛え上げられた男の体が崩れ落ちる。

「おおおお、マクウェルの野郎、本当にあの「デュアン」に勝ちやがった!すげぇ!」
「だから言ったろ!マクウェルが勝つってなぁ!賭けはオレの勝ちだぁ!ハハハ!」
「おいマジかよあの若造!?あれで本当に20だってのか!?」
「クソッタレがー!やっぱりマクウェルの勝ちかよー!」

ここはグランディア。クラルス大陸の中で最も鎖国的な国であり、最も多く王位が継がれる場所。
この国では強き者こそが権利者であり、価値のある者として扱われる。
この国では5年ごとに王位を決めるデスマッチの大会が開かれ、次の王位を狙う強者達が争う。

彼らに恐怖はない。彼らに後悔はない。彼らは生まれながらにして戦士なのだ。

そしてその「戦士の国」で、ある一人の「戦いの鬼才」が20歳の若さにして王位の栄光を手にした___。

その夜、グランディアのとある酒場はいつもの夜よりさらに喧騒に溢れていた。

「ハハハ、やったなマクウェル!おまえなら絶対勝てるって思ってたぜ!」
「オレははじめからわかってたぜぇ?ガキの頃から見どころがあると思ってたんだ。」

ガシガシ、と頭を押さえられる。
『やめろぉ!髪型が崩れるだろうが!』

マクウェルが叫ぶと、おっとわりぃわりぃと言って男たちのうち一人は頭に当てていた手を離した。

「…しかし、これで明日からおめぇは晴れてこの国の王だ。おめぇは晴れて自由になるが、ちょいと寂しくなるな。」

さっきまでの喧騒とは打って変わり、僅かに酒場が静寂に包まれる。

「なぁにしみったれてんだよ!たった5年したらまた会えんだろうが~!」
「ハハ、それもそうだなぁ!いやーわりぃわりぃ!」
周りの男たちから、そうだそうだ~、と励ましの声が上がる。

「そんじゃ、気を取り直してもういっちょおっぱじめようぜ~!ダンナ、全員にビール追加してくれー!!」

ギャハハハと男たちは笑い、宴は続く。

やがて明け方になり宴が終わり、マクウェルはグランディアの宮殿へと向かい歩いていた。

王になった男には5年の間、絶対的な自由と権力が保証される。普通なら誰もが喜ぶところだが、マクウェルが求めていたのは絶世の美女でも、金銀財宝でも、贅沢な食事でもなかった。もちろんそれらの欲がないというわけではないが、マクウェルが最も欲しているものは_____。

______強者だった。

自分を殺せるほど強い強者。それが彼の求める物だった。

彼は強すぎた。グランディアで彼と張り合えると言われていたデュアンでさえも、彼を満足させるものではなかった。もはや、人間では自分の相手になれる者はいないのではないか。

そう思いつつマクウェルが歩を進めていると、黒い服に身を包み、つばの広い中折れ帽を被った男が、彼の前に立ちふさがった。手袋や長いブーツを履いており、素肌や顔は一切見えない。文字通り、黒づくめの男だ。

____妙なやつだ、と思った。
このグランディアにはまずいない服装の野郎…。だが、この国は鎖国的だ。その上、潜りこむにしてもグランディアの屈強な兵士達が警備している。並大抵の輩では、まず奴らの目をごまかすことはできない。
だが、事実、こいつはオレの前に立っている。ということは、只者ではない、ということだ。


______おもしれぇ。

そう思うと、マクウェルは立ちふさがる男に向かって歩いて行く。すると、その男は話す。

「おっと、やめたほうがいい。私に手をだすと、君の人生は粉々にぶっ壊れる。」

「君の運命の路線がバラッバラに切れちまうんだ。…だから、私を襲うつもりなら、いますぐ思いとどまったほうが、いいと思う____ガハァッ!」

男の体が回転しながら宙を舞う。
得体のしれない男を、マクウェルはなにを恐れるでもなく、目にも留まらぬパンチでふっ飛ばしたのである____!

『ゴタゴタしゃべってんじゃねぇよウスノロ。』

『俺達のことは知ってんだろ?ここは俺たち、剣闘士の国だ。招かれた客ならそれなりの礼儀は払うが、侵入者が見つかればどうなるかくらいすぐわかんだろうが」

彼がそう言うと、建物の間や家々から、続々と剣闘士達が現れ、たちまち黒づくめの男は屈強な男たちに包囲されてしまった。

「…く…!」

地面に這いつくばった男がマクウェルを見上げ、悔しそうに口を開く。

「貴様ァァッ!よくもこの私の顔を……傷つけてくれたなァッ!」
「貴様ッ!貴様ッ!後悔させてやる!貴様の生涯を呪ってやろう!」
「この私がわざわざ出向いたというのに、私の美貌によくもこのような……ッ!?」

ズジャアァァァッ!

という音と共に、黒づくめの男の顔がマクウェルの振り下ろした剣によって叩き切られる。

『やれやれ、初めから終わりまでよくしゃべる野郎だったぜ。』

期待をあまりに下回る実力に、マクウェルは はぁ、 と溜息をついて、宮殿へと再び歩を進めようとする。
そこに、殺したと思った男の声が再びかかる。

「……こ…9つだ…!9つの災いが貴様とこの大陸を襲うぞ…!」
「ハハハ!到底貴様ら人間ごときが退けられる災いではない!そしてそれをもって後悔するがいい!私に手を出したことを!あの時、手を出していなければと…!」
「貴様のせいで地は荒れ、湖は干上がり、やがてこの大陸全ては死の大地と化すであろう!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

高らかな笑い声を上げると、黒づくめの男は服ごと灰になり、風に溶けた___。

マクウェルは悪魔に呪われた、大陸に災いが起こる、と、噂はすぐに宮殿まで広がった。
当然、そのような男が王位につけるはずもなかった…。
マクウェルは国から追い出され、この大陸へ降りかかる災いを9つ全て解決したうえで、国に帰ることが許されることとなった。

その後彼は、情報が集まりやすいようにと王都へ向かい足をすすめる。

これが、マクウェル・シードと9つの試練にまつわる伝説の始まりである___。